痛みの治療を知ろう

第6話 ひどい肩こり・首こり

首のこり、肩こり、背部痛(背中の痛み)です。机での長時間仕事や慣れない仕事を始めると、このような症状は誰しもが経験することです。お風呂に入ってぐっすり眠り、翌朝、こりが取れていれば何の問題もありません。ところが、痛みやこりが何日も続くと、仕事や生活の意欲がそがれてきます。

昇進して事務仕事が増えたという、警察官の患者さんがいました。パソコンを使うことが多くなり、外回りの時は気にならなかった肩こりが辛くて仕方がないとの訴えです。マウスをクリックする指は痛むし、腕や肩の力も入りにくい、さらに首のこりや肩こり、肩甲骨間の背中も詰まったような感じで辛い。 画面をじっと見る仕事は、同じ姿勢と慣れないためのストレスで、こりが強くなります。筋肉や目の疲れだけでなく、緊張やストレスが交感神経を緊張させるので、首や肩の回りの筋肉はいっそう緊張し、こってしまうのです。 こった筋肉の周りは血液の流れも良くないために老廃物がたまりやすく、筋肉の疲労回復を遅らせます。

どうすれば楽になるのでしょうか。まずは、肩の回りの運動が大切です。仕事の合間にほんの1〜2分、上半身のストレッチ体操をおすすめします。時間があれば、水泳が良いでしょう。特にクロールは日頃使わない肩の筋肉を鍛えることができ、肩をよく動かすために血液循環も良くなります。 運動ができない場合は、睡眠前の軽い安定剤と鎮痛剤の服用が有効です。毎日飲む必要はありません。辛い時だけで十分です。

それでも辛ければ、星状神経節ブロックが有効です。また、「トリガーポイントブロック」という、こった部位に局所注射をする簡単な方法もあります。 私も、診療が忙しくて肩や背中が強くこることが時々あります。そんな時は同僚の医師をちょっと手招きして、このトリガーポイントブロックをしてもらいます。すると、すーっと痛みが引いていき、自宅に着く頃には肩こりのことは忘れているほどです。

平成15年から16年に毎日新聞日曜版に掲載されました「痛みさえなければ」を再編集しています。