痛みの治療を知ろう

第1話 生活の障害となる片頭痛

仕事を終え、自宅でのんびりと新聞を読んでいたら、字がゆがんできた。テレビの画像もなんだかゆがんで見える。いやな予感がする。字がずれてよく読めない、気持ちが悪い。次第に体がぞくぞくしてきた。「いつものやつが来たな。今日はもう何もできない。終わりだ」。夕食も取らずに床に入ると、拍動する痛みが頭に広がる。目を閉じていても、ギザギザの世界が瞼の裏に見える。

21歳の夏からもう何十回見てきた世界だろうか。いつもこいつのために、約束も予定もみんな反故にされてしまう。気持ちが悪いから寝るしかない。これが私の片頭痛です。

勤務医時代、仕事中に発作が起きたこともあります。そのときは友人や先輩医師に頼んで、星状神経節ブロックをやってもらいました。30分ほど休憩すると、頭痛は半減しており、仕事を続けることができるようになりました。

「片頭痛ですから痛み止めの薬をください」頭の片側が痛いから片頭痛というこの誤解から、軽い頭痛もすべて片頭痛と取られてしまうことがあります。本当の片頭痛はかなり大変でつらく、仕事も手がつかず生活を阻害します。

特長を簡単に述べると、

片頭痛の原因は、何らかの脳神経の異常活動を引き金として脳血管の異常拡張や収縮、それらに呼応して起こる三叉神経の炎症反応ではないかと考えられていますが、結論は出ていません。

軽い片頭痛なら鎮痛薬でいいのですが、できれば医師に相談したほうが良いでしょう。鎮痛薬では収まらない程度の片頭痛が生じた場合には、薬(トリプタン)で対処します。この薬は痛みが生じたとき飲む薬ですが、より即効性のあるてん鼻薬が発売されています。片頭痛発作が月に2、3回以上ある場合は、カルシウム拮抗薬(塩酸ロメリジン)が予防薬として有効ですが、すべての患者さんに効くわけではありません。

症状が強く頻度が多い場合は、ペインクリニックで星状神経節ブロックによる治療を受けて見る価値があると思います。この治療でも頭痛発作をなくすことはできませんが、頭痛の頻度と程度が確実に低下する人を多く見ていますし、私自身も頭痛の程度はかなり低下しました。

平成15年から16年に毎日新聞日曜版に掲載されました「痛みさえなければ」を再編集しています。